大気中の窒素を固定して化学肥料を製造する技術が確立されて1世紀が経ちましたが,以来,窒素は農地や下水などを通じて大量に水環境中へ放出されつづけています.その結果,湖沼や沿岸海域では藻類が増えすぎ,有機汚濁の問題が引き起こされてきました.近年の日本では,下水処理が進んだ結果として,数十年前の汚濁がひどかった時代に比べると,窒素を含めて栄養塩の濃度はかなり低下しました.しかし,人間が窒素が大量に窒素を放出している状況は続いており,栄養塩のバランスにも引き続き大きく影響し続けていると考えられます.
当研究室では,沿岸海域で窒素過多となり栄養塩バランスが変化すると,植物プランクトン群集の組成,さらにはそれを餌として食べるカキの成長や体の化学組成等にどのように影響するかを研究しています.そして,窒素過多という地球規模の環境問題が地域の大切な産業である養殖漁業に及ぼす影響を明らかにするとともに,その緩和に向けた環境管理の方法を探っていきます.
この研究のために,今年,漁協の協力も得て南三陸町の海辺にカキの飼育実験のための設備もおかせていただきました.学生達と試行錯誤しながら組み立てた実験設備です.この設備を活用し様々な実験を行いながら,研究を進めていきます.(TS)